こんにちは!kokingです。
この記事では「自然農法で肥料を使わない理由」について解説しています。
植物は肥料を与えて育てるのが一般的です。
しかし、自然農法では基本的に作物に肥料は与えません。
「肥料を与えずに本当に植物が育てられるの?」思うかもしれません。
ここからは、「自然農法で肥料を与えない理由」「 肥料を与えずに植物が育つのか」について解説してきます。
この記事で分かること
- 自然農法で肥料を植物に与えない理由
- 肥料を与えずに植物が育つのか
- 肥料なしで植物が育つ具体的な方法
目次
自然農法で肥料を使わない理由
それではまず、自然農法で肥料を使わない理由から解説します。
肥料を使わない理由
- 肥料が地球環境を壊しているから
- 健康被害
- 自給率の問題
- 植物に害をもたらすから
- 腐りやすくなり、味が落ちる
肥料が地球環境を壊す
自然農法で肥料を使わない理由は、肥料を使う事が地球環境を壊す原因となっているからです。
近年、肥料による環境被害が問題になっています。
例えば、化学肥料は水に溶けやすい性質があるため、土に撒かれた化学肥料が水に溶け出し、地下水を汚染するということが起こっています。
実際に、肥料による汚染によって、使えなくなった地下水は国内に数多くあります。
さらには、水に溶け出した化学肥料が海へと流れ出し、海水を汚染することもあります。 時々話題となる「赤潮」は、海へ流出した窒素やリンが原因で起こる現象です。 化学肥料を撒くこともこの赤潮が起こる原因 の1つで、化学肥料が海を汚染することで、 水中の酸素がなくなり魚が生きられない環境になってしまいます。
また、肥料が気候変動にも影響するということが分かっています。植物に与えられた肥料は、 そのすべてが吸収されるわけではなく、大半が「亜硝酸大窒素」と言う形で大気に放出されます。 この亜硝酸大窒素は、 CO2やメタンガスとおなじように温暖化物質です。
驚くことにその亜硝酸大窒素は、二酸化炭素の約310倍の温室効果があり、 オゾン層を破壊する最も強力な気体だと言われています。
その他にも、自然環境のバランス崩れる、土壌汚染など様々な問題があります。
このように肥料によって起こされる様々な環境問題を考えて、自然農法では肥料を使わない作物づくりを行います。
ポイント
・肥料が地球環境を
・肥料が、水質汚染、大気汚染を引き起こしている。
肥料がもたらす健康被害
自然農法で肥料を使わない2つ目の理由が「肥料による健康被害」です。
植物は窒素肥料が与えられるとその栄養分を「硝酸態窒素(しょうさんたいちっそ)」と言う形で体内に溜め込みます。 硝酸態窒素は人間の体内にも存在しているので、体に無害とされてきました。しかし、 硝酸態窒素がたくさん含まれている作物が体に悪影響をもたらすことが、分かっています。
硝酸態窒素はタンパク質と同時に摂取することで、ニトロソアミンという強力な発がん物質に変わる可能性があることが指摘されています。
また、硝酸態窒素がたくさん含まれているものを食べることでヘモグロビンが変化し「メトヘモグロビン血症」 になることが問題視されています。 実際に、
硝酸態窒素により赤子や牛の死亡事故などが報告されています。
有機栽培も危険
「有機肥料なら安全」と思われがちですが、 製造方法や材料によっては それは違います、化学肥料よりも危険な有機肥料もあります。
有機肥料には大きく分けて2つの種類があります。 動物の糞を発酵させたできた動物性肥料と、 植物を発酵させてできた植物性肥料です。
動物性肥料はどんな家畜の糞を使って作られているかによって、安全性が変わります。 抗生物質やホルモン剤などの化学薬品が投与されていたり、 遺伝子組み換え植物の飼料などを与えられて育った家畜の糞は危険性が高いです。
植物性肥料も同じで、 農薬や化学薬品が残留している物で作られた肥料は安全とは言えません。
また、 その肥料がどの程度発酵させて作られたかによっても安全性が変わります。
肥料を作るには発酵させる時間がとてもかかります。 しかし、発酵させる時間が長ければ長いほどコストや労力がかってしまいます。 そのため市販されている肥料の中には、発酵が不十分なものや薬を使って無理に発酵を早めたものなどが販売されています。
本来、しっかり発酵させているものであれば、多少化学薬品が含まれていても分解され 無害になりますが、発酵が未熟なものは危険なものが残留している可能性があります。
ポイント
・有機肥料=安全 ではない
・材料や発酵期間によって安全性が変わる
食品自給率の問題
今の日本は食品自給率が低いことが問題になっています。 国内の農家が少なく、海外からの輸入に頼っているのが現状です。
そんな日本の食品自給率はわずか38%ほどしかありません。(※)
しかし、真の自給率はもっと低いといわれています。なぜなら、国内で生産されている作物に使われている肥料も、ほとんどが海外からの輸入品だからです。
植物が成長するために必要な栄養素は主に、窒素(N)、リン酸(P)、カリ(K)ですが、特にリン酸やカリの化学肥料は海外からの輸入に頼っています。
なんと、リン酸の化学肥料は、100%が海外からの輸入で、自給率は0%です。
また、化学肥料だけでなく有機肥料も輸入に頼っています。有機肥料を作るために必要な家畜の飼料の8割以上が海外からの輸入だからです。
このように肥料の自給率が低いことを考えると、ただでさえ少ない食品自給率はもっと低いということになります。
自然農法では、食品自給率の問題も考え、肥料に頼ることのない持続可能な栽培を行います。
(※2020年8月5日発表)
ココがポイント
・肥料の自給率が低いため、 食品自給率はさらに低い。
肥料による植物への影響
肥料は植物に栄養を与えるためのものですが、逆に肥料を与えることで植物に悪い影響をもたらすことがあります。
虫食いが悪化する
害虫と呼ばれる虫は、作物を食べてしまったり、病気を引き起こすので、農家さんにとって悩みの種です。実はこの虫食いも、肥料を与えることが一つの原因だといわれています。
植物は窒素肥料が与えられると、その栄養分をなるべく吸収しようと硝酸態窒素という形で体内にため込みます。葉や茎を食べてしまう害虫はこの硝酸態窒素をたっぷり吸収した植物が大好物です。
肥料を与えれば与えるほど植物は栄養分を吸収しようとし、時に溜め込みすぎた窒素を大気に放出します。この放出された窒素の匂いに虫は引き寄せられるのです。
「虫食いがあるのはおいしいから」「虫食いの野菜は農薬を使っていないから安全」というのは誤解です。
病気にかかりやすくなる
また、肥料を与えることで植物が病気に罹りやすくなるといわれています。
肥料を植物に与えると細胞が肥大化します。肥料を与えると植物が大きくなるのはこのためです。
植物の細胞が肥大化すると、細胞壁が薄くなり外部からの影響を受けやすくなります。外部からの病原菌や異物が植物の体内に入りやすくなるので、どうしても病気に罹りやすくなるわけです。
また、肥料により虫食いが悪化することで、植物が弱り、病原菌にも侵されてしまいます。
ポイント
・ 肥料を与えることで虫食いがひどくなる
・ 肥料を与えることで病気になりやすくなる
味が落ちる
肥料は収穫する作物の品質にも影響します。肥料を与えたものは味が落ちると言われています。
味が落ちるのにはいくつかの理由があります。
化学肥料を与えると、植物はその栄養を水と一緒に吸収します。水と一緒に栄養を吸収するので、それだけ作物が水っぽくなり味が薄くなるなるので「美味しくない」という印象になってしまうのです。
硝酸態窒素も味に影響します。硝酸態窒素が多く含まれていると、色が濃くなり苦味やえぐみが強くなります。
また、肥料を与えて細胞が肥大化した植物は、外部からの異物が入りやすくなるので味が変わってしまう場合があります。
ココがポイント
・化学肥料を与えると作物が水っぽくなり味が薄くなる
・ 硝酸態窒素が多く含まれている野菜は苦味やえぐみが強い
植物が肥料を使わずに育てる方法
ここまで、自然農法で肥料を使わない理由を解説してきました。しかし、肥料を使わずに本当に作物が育つか疑問に思うと思います。
ここからは、 自然農法ではなぜ肥料をほとんど使わずに植物が育つのか、その仕組みについて解説していきます。
自然の循環をうまく利用する
自然栽培の一番の特徴は自然の力を最大限に利用することです。
作物を育てるには肥料を与えるのが当たり前のようになっていますが、自然界を見ると人間が肥料を与えていなくても植物が育っています。 なぜ自然界では肥料がなくても植物が育つのか。それは長い時間をかけてできた自然の循環があるからです。
自然農法ではこうした自然の循環を真似ることで、肥料を使わずに植物を育てます。 逆に、肥料や農薬、除草剤を使うことでこの自然の循環を壊してしまい、 人間が手を加えなければいけなくなってしまうわけです。
では、実際にどのようにして肥料を使わずに植物を育てるのか、そのポイントを紹介します。
草を抜かずに、刈る
自然農法では雑草は抜かず、作物と共存させます。これが無肥料で植物が育つ一つのポイントです。
雑草は作物の成長を妨げたり、肥料分を吸ってしまうと言う理由から、 一般的に嫌われています。しかし、雑草を畑に生やしておくことで、作物や土にメリットをもたらしてくれます。
植物の成長には土壌微生物や土壌動物が重要です。土壌動物や土壌微生物は、枯れた草木を分解して土に戻したり、植物が栄養を吸収するのを助けたりする役割を持っています。
この土壌微生物や土壌動物は、草の根っこから出る「糖」 を食料源として生きています。 そのため雑草を抜かず生やすことで、 その根っこから排出される糖を求めて自然に土壌微生物が増えるわけです。
また、一般的に雑草は与えた肥料分を吸ってしまうと思われがちですが、視点を変えて見てみると実はそうではありません。
肥料を撒くと、その土は一気に肥沃化します。しかし、その栄養分は永遠に土の中に残るわけではなく、雨などによって流れて痩せてしまいます。
雑草を生やしておくことで、その栄養分を吸収し、枯れるとまた土に戻るので、栄養分は流されません。 自然界では、植物が栄養分を吸収し、枯れてまた地に戻ることで栄養が水に流れてしまうことを防いでいるのです。
その他にも、雑草を畑に生やすことで、
- 腐食が増える
- 団粒化構造になる
- 土の跳ね返りを防ぐ
- 土が柔らかくなる
- 生態系のバランスが整う
のようなメリットがあります。
自然農法では草を抜かないと書きましたが、雑草を伸び放題にすると言うわけではありません。雑草が伸びすぎると肝心な作物に日が当たらなくなったり、風通しが悪くなり病気の原因にもなります。 そのため自然農法では雑草を抜くのではなく、刈って地面に敷きます。
雑草を抜かずに刈ることで、根はそのまま地中に残し、敷いた草は分解されて栄養となります。
耕さない
自然農法では一度作った畝は毎年使い続け、耕しません。 土を耕さないと カチカチになってしまいそうですが、 雑草を抜かない自然農法では 硬くなる事はありません。
逆に耕すことで、草の根っこで出来たふかふかな土を壊してしまうことになります。 耕さず、 草を刈って地面に敷くことで、 だんだん土が豊かになっていきます。
混植する
一般的に、植物は一つの畝に1種類を単独で植えることが多いですが、考えてみればそれは不自然です。自然界では、色々な植物が共存し、お互いに影響を与えながら成長しています。
自然農法では、 この自然環境と同じように、色々な植物を共存させて育てることが多いです。相性が良い植物同士を一緒に植えることで、 生育促進、病気・害虫予防効果などが期待できます。
相性の良い植物のことを「コンパニオンプランツ」と言い、農業技術があまり発達していない昔に活用されていました。
コンパニオンプランツとして使われる植物はいろいろありますが、よく使われるのはマメ科です。
マメ科の植物の根には根粒菌という微生物が住んでおり、この菌は 空気中に存在する窒素を土に固定する 働きがあります。 作物を育てるときに、 マメ科を一緒に植えることで、 肥料を与えなくても窒素が供給されます。
自然農法ではこのようにコンパニオンプランツも活用します。
肥料の定義について
ここまで、肥料を使わずに植物を栽培する具体的な方法を紹介してきました。 しかし、 自然農法で肥料を使わないといっても全く肥料を使わないわけではありません。
自然農法を実践している栽培者さんによっても肥料の定義は様々で、 化学肥料や有機肥料、堆肥までも使わないと言う方もいれば、 家庭で出た残飯や米ぬか、油かすなどは許容範囲と言う方もいます。
僕は今、自然農法に実際に挑戦していますが、 あくまでも自然環境に優しいと言うことがコンセプトなので、 米ぬかや油かすなど 最小限のものは巻いても良いと思っています。
そもそも畑は自然環境を開拓したものであって、 一旦自然の循環を壊されてしまっています。 ここから肥料も堆肥も何も使わずに 作物が育つ環境を作るのは とても時間がかかってしまいます。
最初に、米ぬかや完熟堆肥などを使って土壌微生物や土壌動物が住みやすい環境を作ってあげることで、 だんだん土が豊かになり、肥料を与えなくても植物が育つ土になると思います。
まとめ
今回は「自然農法で肥料を使わない理由」 「肥料を使わずに植物が育つ具体的な方法」 を解説しました。 自然農法に興味を持ってくれる人が増えたらいいなと思って書きました。
自然農法とはどういう農法なのか知りたい人は
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参考【自然農法とは】初心者でもわかる!特徴と他の栽培方法との違いを解説。
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