自家採種 野菜栽培

バジルの自家採種|初心者でもできる種採りのやり方を解説!

2025年5月28日

バジルは家庭菜園で人気の高いハーブですが、葉の収穫が終わるとそのまま処分してしまう方もいるかもしれません。でも実は、種取りをしておけば、翌年もまたバジルを楽しむことができるんです。

この記事では、バジルの種採りのタイミングや方法、保存の仕方、自家採種のポイントやQ&Aまで、初心者にもわかりやすくご紹介します。

バジルの自家採種の概要

  • 種採りの時期:花が咲き終わり、穂全体が茶色く乾燥した頃
  • 種採りの方法:茶色くなった花穂を収穫し、殻から種を取り出す
  • 1株から採れる種の量:用途によりバジルシード、スプラウト、来年用と分けて使える
  • 種採りに向く品種:家庭菜園で育てているバジルなら基本的にOK

バジルの自家採種のポイント

強いバジルの種を採るポイントを紹介します。

1. できれば肥料や水は控えめに育てよう!

バジルをはじめ、多くの植物には「育った環境を記憶する力」があります。

例えば、乾燥しやすい場所で育ったバジルは、乾燥している畑でも育ちやすい種を残します。

肥料や水を控えめに育てれば、来年は少ない肥料でも元気に育つようになります。

毎年同じ畑で、できれば肥料は少なく育てることで、いい種が取れるようになるので、おすすめです。

同じ畑で育て続けると種子が強くなる理由は?

植物には、育った環境を“少し覚えておく力”があることが、最近の研究でわかってきています。
これは 「エピジェネティクス(epigenetics)」 といって、遺伝子そのものは変わらなくても、
DNAのメチル化 や ヒストン修飾、small RNA(小さなRNA) といった働きによって、
「どの遺伝子がよく働くか」が変わる仕組みです。

たとえば――
乾燥した環境で育った株から種を採ると、次の世代は少し乾燥に強くなったり、
肥料が少ない畑で育った株の種からは、肥料が少なくても育ちやすい株が出てきたりします。

こうした変化は“ストレス耐性”と呼ばれ、
繰り返し同じ環境で種をつないでいくことで、より強く残りやすくなることもあるそうです。

つまり、
「畑で育てたいなら畑で育った株から種を採る」
「プランターで育てたいならプランターで育った株から採る」
というのは、実はとても理にかなった方法なんです。

農家や家庭菜園の世界で「土地になじませる」「系統ができる」などと言われるのも、
こうした植物の性質が関係していると考えられています。

肥料や水以外に控えると良いものは?

肥料や水を控える以外にも、以下のように自然のままに育てることで、強いバジルの種が取れると言われています。

  • 農薬(特に化学農薬)はなるべく使わない
     病気や虫に対する自分で守る力(抵抗性)が育ちやすくなります。

  • ハウスを使わず外で育てる
     暑さ寒さなど軽いストレスがかかることで、耐暑性が着いたり、耐寒性がついたりします。近年の気候変動で、バジルが育ちにくくなっている例もありますが、種を繋ぐことで、対処できるバジルの性質が育っていきます。

  • 腐葉土や堆肥を入れすぎない
     → 腐葉土や堆肥も肥料と同じように、バジルの栄養となります。栄養たっぷりではなく、少し痩せた土で育つと、根が深く伸びやすくなり、生命力のある種になりやすいです。

こうしたほどよいストレスは、植物の中でストレス耐性を高め、
その情報がエピジェネティクス(epigenetics)という仕組みによって種にも受け継がれる可能性があると言われています。

2. 他のバジルとの交雑(こうざつ)に注意

バジルは、近くに違う品種が植っていると、二つの品種が混ざった種ができてしまうことがあるんです。

例えば、緑のバジルの近くに、赤いバジルを植えたら...

緑と赤い色が混じったバジルになる みたいなこと。

そのため、毎年同じバジルを収穫したい場合は、

異なる品種とは、距離を離して植えるようにしましょう。

 

交雑しやすいバジルと、しにくいバジルは?

バジルは見た目が似ていても、実は“混ざりやすい仲間”と“ほとんど混ざらない仲間”があります。
自家採種するなら、この違いを知っておくと品種が守りやすくなります。

 交雑しやすいバジル(=同じ仲間で混ざりやすい)

一番混ざりやすいのは、ふつうのスイートバジルの仲間です。
これらは植物としてとても近い関係なので、ミツバチなどが花粉を運ぶと簡単に交雑します。

ざりやすい具体例

  • スイートバジル

  • ジェノベーゼバジル

  • ダークオパール(紫バジル)

  • シナモンバジル

  • レモンバジルの多く

  • タイバジル

  • アメリカンバジル

  • カンファーバジル

これらは“同系統のバジル”なので、同時期に咲いているとほぼ確実に交雑すると思っておくと安心です。

こうキリンさん
とくにレモンやシナモンなど、香りの特徴を残したい品種は要注意です!

 交雑しにくいバジル(=遠い仲間でほぼ混ざらない)

一方で、ホーリーバジル(トゥルシー)などはスイートバジルとは遠い種類のため、
普通に育てている分にはほぼ交雑しません。

ざりにくい代表例

  • ホーリーバジル(トゥルシー)

  • クローブバジル(O. gratissimum など)

  • そのほか “スイートバジル系とは遠い種類のバジルたち”

これらは、花粉がついてもほぼ実にならないほどスイートバジルと性質が違うので、同じ畑に植えても大丈夫です。

バジルはシソ科の他のハーブと交雑しますか?

バジルはシソ科の植物なので、他のシソ科の植物と交雑してしまいそうなイメージですが...

結論、バジルは、シソ科の他の植物とは交雑しません

シソ科という大きなグループに入っているだけで、
それぞれは遺伝子的にまったく別物
交雑できるほど近い仲間ではないからです。

科は同じでも属が違うと交雑しない

植物が交雑できるかどうかは、「科」よりも、もっと狭い分類である
「属(ぞく)」や「種(しゅ)」の近さで決まります

  • バジル → バジル属(Ocimum)

  • シソ → シソ属(Perilla)

  • ミント → ミント属(Mentha)

  • ローズマリー → サルビア属(Salvia)

  • タイム → タイム属(Thymus)

  • オレガノ → オレガノ属(Origanum)

上記の植物は、名前は似ていても、属は別物なので、近くに植えても大丈夫です!

 

3. バジルを種取り用に切り替えるタイミングについて

バジルは、花芽を摘んで育てると葉がよく伸び、たっぷり収穫できます。普段はこの方法で、風味のよい葉を楽しむのがおすすめです。

でも、種を取りたいときは少し違います。シーズンの終わりには花芽を摘まず、そのまま咲かせて種をつけさせましょう。こうすることで、花と種をしっかり実らせることができます。

葉の香りは少し落ちてしまいますが、バジル全体はまだ食べられますし、咲いた花はミツバチや蝶などを呼び寄せてくれて、庭の中もにぎやかになりますよ。

葉を楽しむ期間と種取りのタイミングをうまく切り替えることで、どちらも楽しむことができます。

バジルの自家採種のやり方

1. 花穂が茶色くなるまで待つ

花が咲いたあと、しばらくして花穂が茶色く乾燥してきます。この時が収穫のベストタイミングです。雨に当たるとカビの原因になるので、晴天が続く日を選びましょう。

2. 室内での追加乾燥について

収穫した種穂はすぐに処理せず、1〜2日ほど室内で陰干しすると、よりしっかり乾燥させることができます。特に湿気の多い季節には効果的です。

3. 茎をしごいて種を含む殻を落とす

乾燥した花穂は、手袋をつけて茎をしごくようにして種の入った殻を落とします。飛び散りやすいので新聞紙やトレーの上で作業すると便利です。

4. 殻を丁寧にほぐして種を出す

落とした殻をザルやふるいに入れ、優しく揉んで中の種を取り出します。力を入れすぎると種が傷むため、丁寧に行いましょう。

取り出したバジルの種は、小さくて黒い涙型をしています。見た目はチアシードに似ており、ツヤのある滑らかな質感が特徴です。初めて見る方は、他のゴミと間違えないように注意して観察してみてください。

5. 抜け殻を取り除く

軽い抜け殻は風やトレーの傾斜を使って分けられます。見た目を気にする場合はピンセットなどを使って取り除くと良いです。

6. 採種のテクニックと工夫

種を採る際は軍手を使うと手を傷めずに済みます。「風選」や「水選」といった方法で塵を除くと、スプラウト用の清潔な種を得ることもできます。

7. 最後に乾燥と保存

また、種を保存する際には光を避けることも重要です。直射日光や照明の下に長時間置くと、発芽率が落ちてしまうことがあります。

保存の際は、品種ごとにラベルを貼り、収穫日を明記しておくと管理が楽になります。古い種から順番に使うようにすると、ムダなく活用できます。

バジルの自家採種Q&A

Q:どれくらいの期間で種が採れますか?

A:花が咲いてから2〜3週間ほどで穂が茶色くなり、採種のタイミングになります。

Q:採った種はすぐに使えますか?

A:しっかり乾燥させればすぐに使用可能です。ただし、保存する場合は湿気や高温を避けましょう。

Q:1株でも十分に種は採れますか?

A:はい、1株でも来年用には十分な量が採れます。たくさん使いたい場合は数株から採ると安心です。

採種後の殻の再利用について

採種後に残った殻やガクは、畑のナス科野菜の株元に撒くなどして活用することもできます。ただし、完全に種が取り除かれていないことがあるため、人参などの発芽の邪魔になる作物のそばには撒かないようにしましょう。

種のラベルと保存期間の目安

バジルの種は保存状態が良ければ、最長で5年ほど発芽力を保つことができます。ただし、年数が経つごとに発芽率は下がるため、なるべく早めに使うのが理想です。保存の際は、ラベルに収穫日や品種名を明記しておくと管理がしやすくなります。

まとめ

バジルの種取りは難しくなく、慣れればとても楽しい作業です。しっかり採種・保存しておけば、翌年もまた自家製のバジルを楽しむことができます。食用としても活用できるバジルの種、ぜひ今年は採ってみてはいかがでしょうか。

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