「トウモロコシの種を自分で採って育てたい!」と思っても、実はトウモロコシの自家採種には注意すべき点がたくさんあります。特に、他の野菜と比べて交雑や遺伝子汚染のリスクが高く、やり方を間違えると大切な種が台無しになってしまうことも。
この記事では、数年間トウモロコシの自家採種に取り組んできた筆者の経験をもとに、安全に種を採る方法や、採種に向くおすすめ品種、そしてよくある疑問にもお答えしていきます。
目次
トウモロコシの種採りの概要
自家採種の時期:10月頃(株が枯れ始める頃が目安)
自家採種の方法:株につけたまま完熟させ、実が自然に乾燥するまで待ってから収穫
採れる種の量:1つの穂から200粒程度(品種や栽培状況によって変動)
自家採種に適した品種:黄もちトウモロコシ、黒もちトウモロコシ、甲州トウモロコシ
在来種などの固定種・在来種
トウモロコシの種採りのポイント
トウモロコシの種採りは固定種・在来種から
自家採種を成功させるには、まず「遺伝子組み換えではない」「F1品種ではない」固定種・在来種を選ぶことが絶対条件です。
市販されているスイートコーンの多くはF1品種で固定種がほとんどなく、形質が安定しません。自家採種すると形や味がばらついたり、品質が不安定になることがあります。
また、一般的なスイートコーンは甘みのもとである糖分が多いため、デンプンが少なく、種に栄養が不足して発芽力が弱くなる傾向があります。そのため、腐りやすく、自家採種には向かないとされています。
トウモロコシは交雑対策が超重要!
トウモロコシは「風媒花」と呼ばれ、風に乗って花粉が飛ぶため、交雑のリスクが非常に高い作物です。特に周囲1km以内に他のトウモロコシがあると、簡単に花粉が混じってしまいます。
また、市販されている多くのトウモロコシはアメリカ産のF1(交配種)で、遺伝子組み換え(GM)である可能性もあります。そのため、無防備に自家採種をすると、GM汚染を広げてしまう恐れも。
自分でトウモロコシの自家採種を出したいと言う方は、この交雑に気をつける必要があります。
トウモロコシの自家採種のやり方
1.トウモロコシを育てる:多品種と離して植えるのがポイント
トウモロコシは、茎の先端に雄穂(おすほ)、葉のわきに雌穂(めすほ)をつける植物で、風によって花粉が運ばれる「風媒花」です。
花粉は300~500mほど飛ぶことがあり、他の品種が近くにあると交雑の危険があります。最低でも500m、理想は1km以上離すのが理想です。防風林がある場合は300mでも交雑が抑えられることがあります。
また、どうしても周りにトウモロコシを栽培している方がいる場合は、時期をずらすと言う手もあります。
周りの人が育てている時期から数週間遅れて育てることで、雄花の開花時期(花粉が飛ぶ時期)と重ならないようになり、交雑のリスクが下がります。
トウモロコシは10本以上育てよう
トウモロコシは、他の株の花粉で受粉する作物ですが、 その株の数が少ないと種ができても「近交弱勢」といって品質が劣化しやすくなります。 できれば50株以上まとめて育てて、難しければ10株は育てるようにしましょう。
2.採種するトウモロコシの株と実を選ぶ(母本選抜)
トウモロコシは1つの実から十分な種の量が採れます。
栽培したトウモロコシの中から、種子用にするトウモロコシを選びましょう。
種に適したトウモロコシの選び方は以下の通り。
- 葉に病気や奇形がない
- 生育がよく、茎が太く長い
- 倒れずにしっかり立っている
- 果実が大きく、虫害がない
良い種を選んで、来年につなぐことで、元気に成長してくれます。
3.人工授粉の方法
トウモロコシは、他の株の花粉がつくことで種ができます。確実に種をつけたい場合は、人工10分が有効です。
- 雌穂の絹糸が出る前に包皮の先端を1cmほど切り、紙袋をかぶせます。
- 3~4日後、絹糸が出たら、数本の雄穂から花粉を採取し、雌穂の絹糸に振りかけます。
- 絹糸は雌穂の基部から先端へと時間差で伸びるため、2回目の受粉を数日後に行うと効果的です。
- 絹糸が茶色くなるまで、袋をかけたままにしておきます。
なお、「絹糸は何週間も受粉可能」と言われることもありますが、千葉大学園芸学部によると、「抽出後2週間は受精能力を有する」とのこと。受粉は2回程度で十分でしょう。
4.収穫と乾燥
トウモロコシの種を取る場合は、実をそのまま枯れるまで株に付けておきます。
トウモロコシ全体が枯れたら、枯れた穂を収穫し、皮をバナナのように剥きます。
風通しの良い日陰に吊るし、雨に当たらないようにして1〜2ヶ月乾燥させましょう。
5.脱穀と保存
- 脱粒と選別 十分に乾燥させたら、穂から粒を外し、病虫害の粒や小さい粒を取り除きます。
- 保存 種子を封筒に入れ、冷蔵庫で種を保存します。スイートコーンはデンプンが少ないため、しわくちゃになっていても正常です。乾燥と低温管理で5年程度保存可能です。
よくあるQ&A
Q. GM(遺伝子組み換え)と自然交雑してしまったら?
A. 一度GM作物と交雑してしまうと、自然界から取り除くのは非常に困難です。だからこそ、最初の品種選びと栽培場所の隔離がとても重要になります。
Q. 市民農園でも自家採種はできる?
A. 条件を整えれば可能です。ただし、近隣でトウモロコシを栽培している場合は交雑のリスクがあるため、十分な配慮と対策が必要です。
また、市民農園によっては、交雑を防ぐため、トウモロコシの品種があらかじめ決められている場所もあります。確認しましょう。
まとめ
トウモロコシの自家採種は、他の野菜に比べてハードルが高い反面、自分だけの固定種を育てていく楽しさがあります。
時間と手間はかかりますが、安全な品種を選び、丁寧に隔離と管理を行えば、自家採種で地域に合った美味しいトウモロコシを育てることができます。
ぜひ、じっくりと向き合ってチャレンジしてみてください。