きゅうりの収穫が終盤に差しかかる頃、来年のために種を取っておくと、とても経済的です。この記事では、家庭菜園でも簡単にできるきゅうりの自家採種方法を、初心者の方にもわかりやすく解説します。
目次
きゅうりの種採りの概要
きゅうりの種を採るには、まず正しい時期と方法を知ることが大切です。収穫を急がず、十分に熟した実から種を採るのがポイントです。
- 種採りの時期:夏の終わり〜秋口
- 採種に向く実:黄色く完熟したもの(収穫適期から約40〜56日放置)
- 採れる種の量:1本から100〜300粒ほど(品種によっては300個以上)
- 向いている品種:固定種や在来種(F1品種は避けましょう)
きゅうりの種採りのポイント
固定種を選ぶことが大切
市販の苗や種には「F1(交配種)」と表記されたものが多いですが、これらは同じ品質の実を翌年も収穫できるとは限りません。種を毎年採り続けたい場合は、「固定種」や「在来種」と書かれたものを選びましょう。
代表的な固定種には「ときわ地這」「四葉(すうよう)」「鮮緑」「霜知らず地這」「加賀太」「相模半白」などがあります。
また、固定種かどうかわからない場合は、種袋の裏に書かれた品種名を控え、インターネットで調べると確認しやすいです。
さらに、自家採種を繰り返すことで、その土地の気候や環境に合った、病気や害虫に強く、育てやすいきゅうりに進化していきます。
受粉と交雑の注意点
きゅうりは他殖性が強い植物です。交雑を防ぐには、近隣500m以内に他品種の栽培がないか確認し、雌花に袋がけをして他の花粉が付かないようにします。交配には別株の雄花を使い、品質の均一化と自殖弱勢の回避を図りましょう。
なお、きゅうりはカボチャやスイカなど他のウリ科野菜とは交雑しません。
人工授粉で確実に種を採る
きゅうりは単為結果性があるため、花粉がつかなくても実がなることがありますが、その場合種はできません。 虫が受粉をしてくれることもありますが、雨の天気が続くと、虫の活動が鈍くなるので、確実に種を採るには人工授粉が必要です。
雌花と雄花のつぼみを前日に縛っておき、開花日に雄花の花粉を雌花の柱頭にこすりつけます。他の品種と交雑しないよう、人工授粉後も雌花を縛っておきましょう。受粉した日を支柱に記録しておくと便利です。
特に他のウリ科植物(メロン、マクワウリなど)を栽培している場合は、交雑を防ぐためにも人工授粉が重要です。
母本選びのポイント
収穫後半までうどんこ病やべと病が出なかった株、美味しくて歯ごたえの良い果実をつけた株を優先して母本にします。家庭菜園では3〜5株程度からでも採種可能で、冷蔵保存しておけば数年分の種が確保できます。
また、飛び節成型・節成型といった草型に応じて交配位置を変えるなど、品種ごとの特性に合わせた工夫も大切です。
完熟した実から種を採る
収穫用の若い緑のきゅうりではなく、黄色くなり皮が厚くなった完熟の実から種を採ります。完熟した実は種がしっかり育っていて、良い状態で採取できます。
完熟までには、収穫のタイミングから約40〜56日ほど畑に残しておくと、1本1000gくらい、50cm以上に育つこともあります。この大きな実から、十分な量の種が得られます。
ただし、実がついたまま長く放置しすぎると中で発芽が始まってしまうこともあるため、「つるが枯れた」「実が柔らかくなった」などを目安に、追熟のタイミングを見極めましょう。
自家採種のやり方
ステップ1:きゅうりを完熟させる
きゅうりが黄色くなるまで収穫せずに放置します。栽培の終盤に行うのが苗にも負担が少なくおすすめです。
ステップ2:追熟させる
収穫した後、屋外の日陰や室内で1週間ほど置いて追熟させます。特に虫や雨の影響を避けるため、屋内に置くと安心です。葉がすべて枯れた後、すぐに採取するのが理想です。
ステップ3:種を取り出す
採種果の上1/3ほどは種が未発達なことが多いため、下部2/3を使用します。縦に割り、ゼリー状の膜に包まれた種を取り出し、乾いた容器に入れます。水が入らないよう注意しましょう。
ポリ袋などに入れ、1〜2日常温で発酵させます。発酵が進むとゼリーが溶け、洗いやすくなります。
ステップ4:種を洗って選別する
発酵した種をザルなどにあけて手でもみ洗いし、水に浮いた未熟な種を除きます。沈んだ元気な種のみを使用します。
ステップ5:日陰または天日で乾燥させる
風通しのよい場所で2〜3日、パチッと割れるくらいまで乾燥させます。雨の日は扇風機を使って室内で乾かしてもOKです。
ステップ6:保存する
乾燥した種は乾燥剤と一緒に密閉容器に入れ、冷蔵庫で保存します。3〜5年ほど高い発芽率を維持できます。
自家採種Q&A
Q. 市販のきゅうりでも種は採れますか? A. F1品種だと翌年同じようには育たない可能性が高いです。固定種を選びましょう。
Q. 種の保存期間はどれくらいですか? A. 乾燥状態が良ければ3〜5年は発芽率が保たれますが、できれば翌年には使い切るのがおすすめです。
Q. 発酵させないとダメですか? A. 発酵させることでゼリー部分が取れやすくなり、種の質も良くなりますが、発酵臭が気になる場合は丁寧に水洗いでも代用可能です。
Q. 種を採るのは1本だけでもいいですか? A. 1本でも100〜300粒ほど採れるため、数年分の種をまかなうことができます。
Q. 完熟の目安がわからないときは? A. 日数が不明でも大丈夫です。見た目が黄色くなっていて、実に少し弾力が出ていれば完熟のサインです。
Q. 交雑を防ぐにはどうしたらいい? A. 他のきゅうりやウリ科植物の花粉がつかないよう、人工授粉前に蕾を縛っておき、授粉後も花を閉じて管理しましょう。
まとめ
きゅうりの自家採種は、コツさえつかめば家庭でも簡単にできます。固定種を選び、人工授粉や交雑対策を行いながら、完熟した実からしっかりと種を採ることで、翌年も元気なきゅうりを育てることができます。
また、自家採種を繰り返すことで、その土地の気候や環境に適した、病気や害虫に強いきゅうりに育っていくというメリットもあります。特に、美味しく、病気に強く、たくさん実をつける株から種を採ることで、年々育てやすくなっていくのも魅力です。
種代の節約にもなり、自分の畑に合った野菜を育てる楽しさも増します。ぜひ今回の方法を参考にして、自家採種にチャレンジしてみてくださいね。