毎年夏になると、ぐんぐん背が伸びて立派な実をつけてくれるオクラ。実はこのオクラ、少し工夫すれば自分で種を採って、翌年も同じ品種を育てることができます。今回はオクラの自家採取の方法を初心者にもわかりやすいように解説します。
オクラの自家採種の概要
自家採種の時期:10月頃(霜が降りる前)
自家採種の方法:樹に付けたまま完熟させてから収穫
採れる種の量:1つの実から20〜50粒程度
自家採種に適した品種:ダビデの星、エメラルド、丸さやオクラなどの固定種
オクラ自家採種のポイント
他の品種と育てるときは交雑に気を付けよう!
オクラは比較的交雑しにくい作物ですが、近くに別品種がある場合は交雑の可能性もあります。雌雄同花で基本的には自家受粉しますが、品種を複数栽培する場合は、交雑防止のために袋がけをしておくと安心です。
自家採種のやり方
オクラの採種用の株を選ぶ(母本選抜)
オクラは、食べごろのものを収穫せず、さらに長くならせておき、カラカラになったものを種として収穫します。
種にするオクラの実は、適当に選んでもいいですが、よく育つ種を取りたい場合は、より良いものを選ぶ母本選抜を行いましょう。
オクラの種採りをする母本を選ぶ基準
- 生育が良い株
- 曲がった実などの不良果が少ない株
収穫が始まったばかりの時期に果実をつけると株の勢いが弱まるので、採種果は3〜4番花につけます。1株あたりの着果数は1〜2果にとどめておきましょう。
オクラの人工交配の手順
オクラは、異なる品種を近くに植えていた時に交雑してしまう可能性は低い野菜ですが、それでも心配な場合は、同じ品種と人工的に交配させるのは有効です。
交雑とは
異なる品種と 混ざってしまって種ができること。「赤いオクラと緑色のオクラを一緒に植えていて、種子をとったら赤と緑が混ざったオクラが成った」のように混じってしまうことをいいます。
人工交配をする場合は、開花前日に花に袋がけをします。翌朝に袋を外して、雄しべの花粉を絵筆で雌しべに塗り、その後再び袋をかけます。同じ品種間では筆の使い回しも問題ありませんが、異なる品種間では別の筆を使うか、水洗いして乾かした筆を使いましょう。袋はその日の夕方に外して完了です。
オクラの種を採る実の収穫とタイミング
オクラは完熟させてから収穫します。果実は硬くなり、茶色く乾燥してカラカラになるまで株につけたままにしましょう。完熟が近づくと実が褐色になり、まるでミイラのようにカラカラになります。剪定鋏でも切れないほど繊維質になり、裂け目から黒いタネが覗くようになります。
この状態になると、新たな花も咲かず、株全体が種に栄養を集中させていることがわかります。
収穫した果実は手で割って種を取り出します。2番果や3番果から採種するのが理想ですが、株が少ない場合は残った元気な株からでもOKです。
採種の目安は開花後40日ほど。実際には、晴れが続いたタイミングで収穫し、手触りがざらざら・かさかさしていればOKです。
オクラの種の選別(水選)
選種(せんしゅ)と水選(すいせん)を行い、質の良い種だけを選びます。器に水を張って種を入れると、重くて中身が詰まった種子は沈み、軽くて未熟な種や異物は浮かびます。2〜3時間ほどで選別できますが、水に浸けすぎると発芽の恐れがあるので注意しましょう。
中には欠けたものもあるため、不良種は取り除きます。
オクラの種を乾燥させる
選別後の種子は風通しの良い日陰で1週間ほど乾燥させます。乾燥が不十分だとカビの原因になりますので、しっかりと乾燥させておきましょう。
余裕があれば発芽試験をしておくと安心です。湿らせたキッチンペーパーなどに種を並べ、室温で経過を観察します。日ごとに発芽率を確認し、発芽率が安定した時点で結果を確定します。
オクラの種子の保存
乾燥させた種子は、乾燥剤と一緒に密閉容器(瓶やジップロックなど)に入れ、冷蔵庫で保存します。保存容器には品種名と採種日を記載しておきましょう。種が混ざらないように明確にラベルをつけておくのも大切です。
また、光や温度変化は発芽率を下げる原因になるので、日光の当たらない冷暗所で保存するのが理想です。専用の冷蔵庫を使う家庭菜園家さんも増えています。
自家採種Q&A
Q. 枯れる前に種を採っても発芽しますか? A. はい、きちんと乾燥させた種であれば問題なく発芽します。我が家では房ごと1年放置したものでも、翌年元気に育ちました。
Q. どの品種でも自家採種できますか? A. 固定種や在来種であれば、次の年も同じように育てることができます。F1品種だと性質がバラつくため、自家採種には向いていません。
まとめ
オクラの種採りは、枯れるのを待たずとも、ちょっとした工夫で早めに行うことができます。2つ目の実を残し、きちんと乾燥させるだけで、しっかりとした種を確保できます。「ダビデの星」や「エメラルド」のような固定種なら、味も良くて自家採種向き。花オクラと比べて時間はかかるものの、やってみれば意外と簡単。人工交配や母本選抜、水選や発芽試験といった工程も加えれば、より精度の高い自家採種が可能になります。
地域の風土に適応した作物を育てる一歩として、オクラの自家採種をぜひ始めてみてください。自分の畑で育てたタネがまた芽を出す喜びは、格別ですよ。