「そろそろ梅雨入りかな?」と思ったら、そわそわし始めるのがネギの自家採種の季節です。特に、ネギやホウレンソウ、ソラマメ、アブラナ科の野菜は、この時期に種を採るチャンス。でも、ちょっとしたタイミングのズレや天気の変化で台無しになることもあります。今回は、ネギの種採りについて、自家採種歴のある筆者がポイントをわかりやすくご紹介します。
目次
ネギの種採りの概要
自家採種の時期:6月頃(梅雨入り前の晴れ間が狙い目)
自家採種の方法:ネギ坊主(花)をつけたまま成熟させ、タネが一部露出したら収穫
ネギの種の寿命:およそ1〜2年(長期保存には不向きなので、毎年採種するのがおすすめ)
ネギは種からも育てられますが、分けつ(株分け)でも増やせるのが特徴です。とはいえ、数を一気に増やしたいときには、やはり種採りがおすすめです。
ネギの種採りのポイント
十分な花数を確保する
ネギの自家採種では、ある程度の本数をまとめて花を咲かせることが大切です。10本以上は用意したいところです。花が少ないと、種の量も少なくなりがちです。
収穫のタイミングに注意
ネギ坊主は、タネが露出してくるまで待ちましょう。焦って早めに収穫すると、未熟なタネばかりになってしまいます。タネが3分の1ほど顔を出したくらいが、ちょうど良い収穫のタイミングです。
収穫後は風通しの良い場所で追熟
ネギ坊主ごと収穫したら、風通しの良い半日陰の場所で追熟させます。雨に当たるとカビの原因になるので、必ず雨が当たらない場所を選んでください。
自家採種のやり方
ネギ坊主を観察する
ネギの花(葱坊主)が咲き終わったあと、黒いタネがちらほらと見えてくるようになります。この状態になったら、種が熟してきている証拠。タネが完全にこぼれる前に、早めの準備が大切です。坊主が茶色っぽく乾いたように見えてきたら、収穫のタイミングが近い合図でもあります。
晴れ間を狙って収穫
収穫は梅雨入り前の、しっかり晴れた日を選びましょう。雨の日や湿気の多い日はカビの原因になってしまいます。ネギ坊主をハサミなどで切り取り、傷つけないように優しく取り扱ってください。雨が降りそうなときはタイミングを見計らって、ぎりぎりまで待つのも手です。
風通しの良い場所で乾燥
収穫したネギ坊主は、そのままにしておくと種が自然にこぼれてしまう恐れがあります。そこで、トレーなどに新聞紙を広げ、その上にネギ坊主を並べて、風通しの良い半日陰の場所で陰干しするのがおすすめです。ネギの花は一斉には咲かないため、種の成熟にもばらつきが出ます。このため、収穫後に一定期間「追熟」させることで、すべての種がしっかりと熟すのを待つ必要があります。乾燥と追熟を兼ねて、2〜3週間はじっくりと干しましょう。収穫したネギ坊主は、新聞紙などに広げて半日陰で乾燥させます。直射日光は避け、湿気がこもらないように風通しの良い場所を選びましょう。乾燥には2〜3週間かかりますが、しっかりと乾燥させることでタネの保存性がぐんと上がります。雨の日が続く場合は室内に干すなどの工夫も必要です。
タネを取り出す
完全に乾いたネギ坊主を手でもむと、黒いタネがぽろぽろと落ちてきます。もみ殻や細かいゴミが混じることもあるので、ふるいやザルでふるってタネだけを選り分けましょう。優しく扱うことで、タネの傷みも防げます。
ザルや金網での選別がうまくいかない場合には、「水選」という方法を試すこともできます。水選とは、乾燥した種を水に入れて、沈むもの(重くて充実している種)と浮かぶもの(軽いゴミや未熟な種)を分ける方法です。沈んだ種は発芽の可能性が高いため、効率的に選別できます。水選を行った後は、種をしっかりと乾燥させてから保存するようにしてください。
保存する
取り出したタネは、しっかり乾燥させたあとに保存します。湿気を嫌うので、密閉できる容器や乾燥剤入りの瓶、もしくは通気性のある紙袋に入れて、冷暗所で保管しましょう。冷蔵庫の野菜室なども保存には適しています。できるだけ早めに使い切るのが理想ですが、1〜2年以内であれば発芽率も高く保てます。
自家採種Q&A
Q. どのくらいの種が採れますか?
A. 1つのネギ坊主から数十粒のタネが採れます。複数本育てていれば、翌年蒔くには十分な量が確保できます。
Q. ネギの品種はなんでも種採りできますか?
A. 分けつで増やすタイプのネギもありますが、固定種であれば種採り可能です。九条ネギなどは、自家採種でも安定した品質が期待できます。
Q. 雨の日が続くときはどうしたらいい?
A. タイミングが難しいですが、なるべく晴れ間を見つけて収穫してください。どうしても無理なときは、ビニール屋根をかけるなどして、雨を避けましょう。
Q. 種がすぐダメになってしまうの?
A. ネギの種は寿命が短く、1〜2年で発芽率が落ちるため、保存には注意が必要です。冷暗所で保管するのはもちろん、できれば毎年採種するのがおすすめです。
Q. ひと株だけで種採りしても大丈夫?
A. ネギは「自殖弱勢」と呼ばれる性質があり、近親交配を繰り返すと弱い種になってしまいます。なるべく複数株から種を採るようにし、健康で勢いのある株を選んで育てましょう。
Q. どうしてネギの種採りは難しいの?
A. 一見簡単そうに思えるネギの種採りですが、実は「自殖弱勢」や「短命な種子」という特性のため、難しさがあります。特に1株だけから何度も種を採ると、世代を経るごとに発芽力が落ちてしまいます。複数株からの採種を心がけるとともに、タネはなるべく新鮮なうちに使うのがポイントです。
まとめ
ネギの種採りは、ちょっとしたタイミングと手間をかけるだけで、翌年の育苗に大きな助けになります。分けつで増やす方法と併用すれば、より効率的にネギを増やすことができます。また、同じ株から何度も種を採ると弱くなる可能性があるため、毎年少しずつでも多様な株から採種するように心がけると安心です。ネギにはいろいろな品種があり、地域ごとの在来品種や用途に合った品種を選ぶ楽しみもあります。今年はぜひ、自家採種にも挑戦してみてくださいね。